AI活用読了 約6

生成AIは、もう「十分」なところまで来たんじゃないか

最近、生成AIを使っていて、以前ほど「うわ、すごい」と思わなくなってきました。

別にAIの性能が落ちたわけではありません。

むしろ逆です。

文章を書かせてもかなり自然ですし、プログラムを書かせても相当なところまでできます。調べもの、資料作成、アイデア出し、データ分析。

少し前だったら「こんなことまでできるのか」と驚いていたことが、今では普通になってしまいました。

そして最近、ふと思ったんです。

生成AIって、基盤モデルとしてはもう「十分」なところまで来たんじゃないか。

もちろん、これからも性能は上がるでしょう。

でも、普通の人が仕事や生活で使うという意味では、モデルそのものがさらに賢くなることの価値は、以前ほど大きくないのではないかと思っています。

昔、CPUにも似たような時期があった

これ、昔のパソコンと少し似ています。

20年くらい前は、新しいCPUが出るたびにパソコンの性能が目に見えて上がっていました。

新しいパソコンを買えば、

「速い!」

とすぐ分かった。

Windowsの起動も速くなるし、ソフトも軽快になる。

だからCPUの性能向上そのものが、ユーザーにとって大きな価値でした。

ところが、あるところから変わりました。

インターネットを見て、WordやExcelを使って、メールをして、動画を見る。

普通の人がそういう使い方をするだけなら、数年前のCPUでも困らなくなった。

最新CPUが20%速くなったとしても、

「だから何?」

となってきたわけです。

CPUの性能向上が止まったわけではありません。

今でも毎年進化しています。

ただ、一般ユーザーにとっての限界効用が小さくなった。

性能が上がることと、ユーザーが感じる価値が比例しなくなったんです。

今の生成AIも、少しそこに入り始めている気がします。

生成AIも「もっと賢く」が価値ではなくなりつつある

僕は仕事柄、生成AIをかなり使います。

特にプログラミングでは、ほぼ毎日使っています。

数年前のAIコーディングと比べると、今は別物です。

ある程度きちんと指示すれば、普通の業務システムならかなりのところまで作れます。

Webアプリも作れる。

SQLも書ける。

既存コードを読ませて修正させることもできる。

エラーを見せて原因を調べさせることもできる。

もちろん、間違えることはあります。

設計が雑になることもある。

でも、それは人間だって同じです。

少なくとも「AIにプログラムを書かせる」という行為そのものは、もう実用段階を超えて、普通の開発手段になってきたと感じています。

そうなると、新しいモデルが出て、

「コーディング性能が12%向上しました」

と言われても、以前ほど興奮しません。

もちろん良くなるのは歓迎です。

でも実際の仕事では、それよりも、

ちゃんと既存システムを理解してくれるか。

途中で文脈を忘れないか。

GitHubやデータベースときちんと連携できるか。

勝手な変更をしないか。

セキュリティは大丈夫か。

こっちの方がはるかに重要になってきます。

次の競争は「頭の良さ」ではなく「使えるかどうか」

だから、これからのAI競争は少し変わると思っています。

これまでは、

「どのAIが一番賢いのか」

が中心でした。

ベンチマークの点数だったり、数学の問題だったり、プログラミング能力だったり。

もちろん、そこもまだ競争は続きます。

ただ、ユーザーからすると徐々に、

「どれが一番仕事で使えるのか」

の方が重要になる。

たとえば、AIが会社のメールを読める。

カレンダーを見られる。

社内の資料を探せる。

顧客データを確認できる。

必要ならシステムを操作できる。

そして、それらを安全に実行できる。

こちらの方が圧倒的に価値があります。

モデルが10%賢くなるより、

「昨日までできなかった業務を丸ごと任せられるようになった」

方がインパクトは大きい。

つまり、AIの価値の中心が、

モデルそのものから、AIを取り巻く仕組みに移っていく。

そんな感じがしています。

セキュリティや権限管理がものすごく重要になる

特に企業利用ではここが大きいと思います。

AIが賢くなればなるほど、できることが増えます。

できることが増えるということは、逆に言えば危険も増える。

会社のメールを読める。

顧客情報にアクセスできる。

データベースを変更できる。

請求書を発行できる。

場合によってはメールを送ることもできる。

ここまで来ると、

「AIが賢いかどうか」

より、

「誰が何を許可したのか」

の方が重要です。

承認フロー。

アクセス権限。

操作履歴。

監査ログ。

情報漏えい対策。

こうした一見地味な部分が、AIを仕事で本当に使えるものにする。

たぶん今後は、この辺りの完成度でサービスの差が出てくると思います。

AIが進化するほど、AIの存在を意識しなくなる

もう一つ面白いのは、AIが普及すると、逆に「AI」という言葉をあまり使わなくなるんじゃないかと思っています。

今は何でも、

「AI搭載」

「生成AI対応」

「AIエージェント」

と言います。

でも、そのうち当たり前になります。

スマートフォンで文字入力をするときに、

「この予測変換には機械学習が使われています」

なんて誰も意識しません。

Googleマップを使うときにも、裏側のアルゴリズムなんて考えません。

AIも同じになるでしょう。

システムの中にAIが入っている。

でもユーザーはAIを使っている意識すらない。

ただ仕事が楽になる。

僕はその状態が、本当の意味でAIが普及した状態だと思っています。

だから、ソフトウェアを作る人間の仕事はなくならない

一時期、

「AIがプログラムを書くようになったら、ソフトウェア開発者はいらなくなる」

という話がよくありました。

僕は最近、むしろ逆なんじゃないかと思っています。

コードを書く価値は確実に下がる。

でも、何を作るのか。どう業務に組み込むのか。失敗したときにどう戻すのか。

そういう判断の仕事は、むしろ重要になる。

このあたりは前回の記事(AIで誰でもSaaSを作れる時代、30年エンジニアは何で戦うのか)に書いたとおりです。

AIは「驚く技術」から「使うインフラ」になる

僕は生成AIが終わったと言いたいわけではありません。

むしろ逆です。

これから本格的に社会に入っていくと思っています。

ただ、そのフェーズが変わった。

これまでは、

「こんなことまでAIができる」

という時代でした。

これからは、

「AIを使って何をするか」

の時代になる。

CPUが十分速くなったあと、パソコンの価値がなくなったわけではありません。

その上でインターネットが広がり、クラウドが生まれ、スマートフォンが登場し、さまざまなサービスが生まれました。

AIも同じなのかもしれません。

基盤モデルの性能競争はこれからも続くでしょう。

ただ、普通のユーザーにとっては、そろそろ「十分に賢い」。

だから次は、その十分に賢いAIを、

どう仕事につなげるのか。

どう安全に使うのか。

どう現場の仕組みに埋め込むのか。

そこが勝負になる。

最近、新しいAIモデルを見ても以前ほど驚かなくなったのは、AIに飽きたからではないのかもしれません。

単純に、

生成AIが「未来の技術」ではなく、普通の道具になり始めた。

そういうことなんじゃないかと思っています。

AI活用生成AI業務システムセキュリティ
Author
遠藤 友治

フォワード フィールド テクノロジーズ株式会社 代表取締役。 30年にわたり中小企業の業務システム・基幹システムの開発に従事。 通信販売管理システムを自社プロダクトとしてゼロから立ち上げ、約30社に導入。 一般社団法人日本生成AI推進協会 技術部長。

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