AI活用読了 約3

ECで本当に役立つAIは、商品説明ではなく在庫と物流を動かす

生成AIの活用と聞いて、多くのEC事業者が最初に思い浮かべるのは、商品説明文の作成ではないでしょうか。

商品の特徴を入力すれば、AIが数秒で紹介文やキャッチコピーを作ってくれる。確かに便利です。しかし、商品説明を少し早く作れたからといって、EC事業全体の利益が大きく改善するとは限りません。

ECで本当に大きな効果を生むのは、文章を書くAIではなく、在庫や物流を動かすAIです。

ECの利益は「売れた後」に失われている

通販業務では、商品が売れてから多くの問題が発生します。

在庫があると思って販売したのに、実際には欠品していた。売れない商品を大量に仕入れてしまった。複数のモールで同時に注文が入り、在庫数が合わなくなった。出荷予定日を過ぎているのに、担当者が気づかなかった。

こうした小さなズレは、キャンセルや問い合わせの増加、作業時間の浪費につながります。

商品説明をAIに書かせて10分短縮するより、欠品を1件防ぐ方が、会社に与える効果は大きいのです。

AIは「判断が必要な作業」に使う

在庫管理では、単純に現在庫を見るだけでは十分ではありません。

過去の販売数、曜日、季節、広告、キャンペーン、納品までの日数などを考慮しながら、次にどの商品がどれだけ売れるのかを判断する必要があります。

AIを活用すれば、これらのデータから需要を予測し、「この商品は来週欠品する可能性が高い」「この商品は過剰在庫になっている」といった警告を出せます。

物流でも同様です。

注文内容、配送先、商品の大きさ、配送業者、指定日時などを確認し、出荷の遅れや入力ミスを事前に検知できます。普段と違う数量の注文や、同じ顧客による重複注文を見つけることも可能です。

つまりAIの価値は、作業を代行することだけではありません。人間が見落としやすい異常を、問題になる前に知らせることにあります。

中小ECほど効果が大きい

大企業なら、在庫管理、受注処理、出荷、問い合わせ対応をそれぞれ別の担当者が行えます。

しかし、中小の通販事業者では、一人が複数の業務を兼任していることも珍しくありません。そのため、注文が増えるほど確認作業が増え、売上が伸びているのに現場が疲弊するという現象が起こります。

ここで必要なのは、何でも自動化する巨大なシステムではありません。

まずは、欠品しそうな商品を知らせる。出荷予定日を過ぎた注文を抽出する。在庫数が急に変化した商品を検知する。仕入れが必要な商品を提案する。

こうした小さな判断をAIに任せるだけでも、担当者の負担は大きく減ります。

通販システムは「記録する道具」から変わる

これまでの通販システムは、注文や在庫を正確に記録することが主な役割でした。

これからは、記録されたデータをもとに、次に何をすべきかを提案するシステムへ変わっていきます。

「この商品を30個発注してください」

「この注文は出荷が遅れる可能性があります」

「この商品は返品率が上昇しています」

このように、システム側から担当者へ働きかけるのです。

もちろん、最終的な判断までAIに丸投げする必要はありません。AIが候補を示し、人間が確認して実行する形から始めれば、安全に導入できます。

ECにおけるAI活用で重要なのは、派手なチャット画面を追加することではありません。

受注、在庫、仕入れ、配送のデータをつなぎ、問題を早く発見できる状態を作ることです。

商品説明を書くAIは便利です。しかし、会社の利益を本当に変えるのは、欠品を防ぎ、過剰在庫を減らし、商品を予定どおり顧客へ届けるAIです。

ECのAI化は、文章からではなく、在庫と物流から始めるべきです。

AIEC在庫管理物流
Author
遠藤 友治

フォワード フィールド テクノロジーズ株式会社 代表取締役。 30年にわたり中小企業の業務システム・基幹システムの開発に従事。 通信販売管理システムを自社プロダクトとしてゼロから立ち上げ、約30社に導入。 一般社団法人日本生成AI推進協会 技術部長。

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