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「持たないデータは漏れない」――IPAの緊急要請を、通販のシステムを20年作ってきた目で読む

2026年10月9日、国の情報セキュリティの専門機関であるIPA(情報処理推進機構)が、「速やかに実施すべき対策」を公表しました。金融機関や通信事業者などで、不正アクセスによる情報漏えいが相次いでいるためです。経済産業省の注意喚起とあわせて、経営者が自ら対策を進めるよう求めています。

要するに「今すぐ点検してください」ということです。点検の柱は3つです。

  • 外に公開しているシステムを洗い出し、出入りの記録に怪しいところがないか、弱点をふさぐ修正を当て忘れていないかを確かめる
  • クラウドや、社外から社内につなぐ仕組みなど、使っている外部のサービスを洗い出し、身に覚えのないアカウントがないかを確かめる
  • 「不要な情報は持たない」を原則に、持っているデータを必要最小限にする

この3つ目について、今日は書きたいと思います。

この記事は、動画でもお話ししています

「不要なデータを持たない」は、実は難しい

正直に言うと、これは難しいです。商売で実際に使っているデータは、消すことはできません。お客さんの住所も注文履歴も、通販には必要です。

僕は、この言葉の本当の意味は「そのデータを、インターネットから届く場所に置く必要があるのか」だと思っています。

たとえば運転免許証のような、センシティブな情報。それをインターネット経由で、いつも見るでしょうか。見ないのであれば、オンラインに開いておく理由はありません。

もちろん、オンラインに開いていなくても、中に入り込まれたらデータの置き場所につながれてしまいます。だからこそ、持たないデータは漏れない。不必要なデータは、なるべく持たないほうがいいのです。

僕がやっていること:外には「キー」だけを出す

僕は20年、通販会社向けに基幹システムや、その周りのシステムを作ってきました。その中でずっと守っているのが、インターネット上に出すデータは、個人情報をかなり絞ることです。

たとえば、注文番号をデータ同士をつなぐ目印、つまり「キー」にします。インターネット側に置くのは、注文番号とそれに必要な最小限の情報だけ。その番号が誰の注文なのかは、公開していない社内のデータベースと紐付けて初めて分かるようにしています。

漏れてもいいという意味ではありません。でも最悪漏れたとしても、それだけでは個人が分からない。そういう形です。

クラウドは便利。でも、全部を入れたくない

普通は、クラウドに全部のデータを入れて、一気通貫のシステムにしたいと思うでしょう。そのほうが便利で、コストも安いです。

でも僕は、古い人間なのかもしれませんが、接続できる場所を絞ったところにデータベースを置いています。大量の個人情報を、インターネットからつながる場所に置くことは、やっぱりしたくないんです。

ただ、これがどの会社にも正解だとは言いません。大きな事業者さんにとっては、クラウドや、ネットで借りて使うサービスのほうがコストがけた違いに安い。リスクはあっても、ちゃんと管理できていればいいわけです。僕のやり方をそのまま当てはめると、SaaSの良さがなくなり、内部のコストが高くなって立ち行かなくなるでしょう。セキュリティは、本当に難しいところです。

それでも、内製がいちばん堅いと思う

以前の記事でも書きましたが、僕は、外に丸投げせず自分たちでシステムを作って持つ「内製」が、いちばん堅いと考えています。内製なら、オンプレミス(クラウドではなく、社内のネットワークで動かす形)も選べます。

もちろん、狙われたらやられます。ただ、攻撃する側からすれば、個別の中小企業を一つずつ狙うより、情報が大量に集まっているところを狙うほうが割に合います。大量の情報があるクラウドやSaaSが狙われやすいのは、そのためだと僕は見ています。

これからは、「全部を一か所に集めない」「外には必要なものだけ出す」という仕組みが、もう一度見直される時代が来ると思います。まずは自社のデータがどこにあって、どこからつながるのか。IPAの要請をきっかけに、一度確かめてみてください。

漏えいがどこから起きているのかは、こちらで経路ごとにまとめました。→ 相次ぐ情報漏えい、どこから入られた? 経路別に「本当に効く対策」をやさしく解説

参考:IPA「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえ、速やかに実施すべき対策等について」

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Author
遠藤 友治

フォワード フィールド テクノロジーズ株式会社 代表取締役。 1996年から業務システムの保守・開発に従事。官公庁・保険・製造業を経て、2007年からコンサルティング会社の開発部門を統括。2026年にFFTを創業。一般社団法人日本生成AI推進協会 技術部長。

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