通販・EC読了 約7分

食品はまだ20回に1回しかネットで買われていない。EC化率9.8%の内訳を読む

毎年秋になると、経済産業省からECの市場調査が出ます。日本の通販の「成績表」のような資料です。今年は2026年10月21日に、2025年の数字が発表されました。

ニュースの見出しは「市場規模27.6兆円、5.5%増」。数字だけ見ると、今年も順調に伸びています。

でも、僕が一番気になったのは別の数字でした。物販のEC化率9.80%。前年からの伸びは0.02ポイント。ほぼ止まっています。

この記事は、動画でもお話ししています

1日数件が、10年で数万件になった時代

約20年前、通販は本当にすごい勢いで伸びていました。ネットに出せば売れる。そんな時代です。

ただ、システムが追いついていませんでした。受注の管理は手書きやエクセル。モールごとに別々の管理画面を開いて処理していたので、複数のモールに出店している会社はとくに大変でした。

当時の展示会には、「すぐに使えて、ネットに強い通販の基幹システムはないか」と探しに来る人が本当にたくさんいました。大手のEC事業者の方から「うちと連携してほしい」と声をかけてもらうこともあったほどです。今は逆で、こちらから連携を申し込んでも審査があり、ハードルはかなり高くなっています。

僕たちがサポートしていたお客さんでは、最初1日数件だった受注が、10年で1日数万件になりました。それくらい伸びた時代でした。

今は展示会に出ても、システムを探している人にはなかなか出会えません。あの頃は通販が伸びていて、システムの方が追いついていなかった。今は市場が成熟したんだなと、肌で感じています。

「待っていれば伸びる」時期は終わった

まず全体の数字です。消費者向けのネット通販の市場は27兆5,580億円で、前年から5.5%増えました。このうち、物を売る「物販」は15兆8,233億円で、3.97%増です。

EC化率というのは、店頭も含めた物の買い物全体のうち、ネットで買われた割合のことです。これが上がっているうちは、お客さんの方からネットにやって来てくれます。通販会社が特別なことをしなくても、ある程度は売上が伸びたわけです。

ネットで買う割合は10年で約2倍。でも2025年は、ほぼ足踏み(経済産業省「電子商取引に関する市場調査」各年版、物販系分野)
ネットで買う割合は10年で約2倍。でも2025年は、ほぼ足踏み(経済産業省「電子商取引に関する市場調査」各年版、物販系分野)

その割合が、いま横ばいになっています。物販のネット通販は3.97%伸びましたが、それは店頭も含めた買い物全体が同じくらい伸びたからです。しかも金額には、物価が上がった分も含まれています。

つまりこれからは、ネットの中でお客さんを取り合う時代です。

参考までに、アメリカでは小売の売上の17.1%がネット通販です(2026年4〜6月期、米国商務省)。数え方が違うので単純には比べられませんが、日本はまだ店で買う割合が高い国だと言えます。

それでも、食品はまだ「空いている」

とはいえ、悲観する話ばかりではありません。分野別に見ると、食品・飲料・お酒は市場が一番大きく(3兆3,332億円)、伸び率も一番高い(6.96%)分野です。

それでいて、ネットで買われる割合は4.66%。家電は43%、本や音楽は58%がネットで買われているのに、食品は20回に1回もネットで買われていません。

食品は、ネットで買う割合が一番低く、伸びは一番大きい(経済産業省「令和7年度 電子商取引に関する市場調査」、物販の主な5分野)
食品は、ネットで買う割合が一番低く、伸びは一番大きい(経済産業省「令和7年度 電子商取引に関する市場調査」、物販の主な5分野)

通販会社の中には、食品を扱うところもたくさんあります。全体としては頭打ちに見えても、自分たちの分野にはまだ広い余白がある。今年の数字で、僕が一番伝えたいのはここです。

僕たちのお客さんにも、店頭中心で食品を売っていて、通販も伸ばしてきた会社があります。一番伸びたのはコロナの時期でした。みんなお店に買いに行けなかったので、通販がぐっと伸びたんです。ただ、コロナが明けると、やはり下がった印象です。

食品通販には、食品ならではの苦労もあります。消費期限のある商品は、とにかく早く発送しなければいけません。そのために、注文を受けてから発送するまでをいかに短くするか、いろいろな仕組みを考えて工夫してきました。さらに受注を生産の管理にもつなげて、無駄なく作って出荷できるようにする。そこに一番苦労しました。

食品の通販には伸びしろがあります。でも、その伸びしろを取りにいくには、受注から出荷までの速さ、生産との連携、そしてマーケティング。この3つが大事だと、現場を見てきて感じています。

会社どうしの取引の方が、先にネットに移っている

もう一つ、あまり話題にならない数字があります。会社どうしの取引(BtoB)は560.1兆円で8.9%増。そのうちネットなどで注文された割合は45.9%で、前年から2.8ポイントも上がっています。消費者の買い物が横ばいなのに、会社の発注はどんどんネットに移っています。

会社どうしの取引は、半分近くがネット経由になった(経済産業省「令和7年度 電子商取引に関する市場調査」)
会社どうしの取引は、半分近くがネット経由になった(経済産業省「令和7年度 電子商取引に関する市場調査」)

ただ、だからといって電話やFAXの注文がすぐになくなるとは、僕は思っていません。

中小の通販会社では、今もかなり残っているはずです。1日の注文が数件だけ、出店しているモールが1つだけ、という会社なら、仕組みを入れなくても十分回ります。担当の方は大変でしょうし、自動化したいと思っている方もいると思います。それでも件数を考えると、システムを入れてまで自動化するほどではない、という判断になるのはよく分かります。

それに、電話やFAXは今も大事な売り場の一つです。たとえばテレビショッピング。若い人はテレビで見てネットで注文しますが、年配の方は電話で注文している印象です。僕の親や周りの女性たちも、電話で結構頼んでいます。電話やFAXを好む年齢層は、確かにいるのです。

さらに、セキュリティが気になる今の時代です。あえて電話やFAXで注文したいという人が、これから増えることもあるかもしれません。

数字は「自分の位置」を知るために使う

市場規模のニュースは、大きな金額だけが話題になって、そのまま忘れられがちです。でも伸び率や分野別の割合は、自分たちがどこに立っているかを知るための、とても便利な物差しです。

  • 自社の通販売上が3.97%以上伸びていれば、市場より速く成長している
  • 横ばいなら、市場が伸びた分だけお客さんを取られている
  • 食品を扱うなら、比べる相手は6.96%

自社の通販は、去年3.97%より伸びましたか? 食品なら、6.96%より伸びましたか? もし伸びていないなら、そこから考えることがたくさんあるはずです。

実際、僕たちのお客さんを見ていても、まだ伸びている会社はあります。市場全体が横ばいの中で伸びているのですから、取り合いの局面に入っているのだと思います。

そして、売り方は今、大きな転換期にあります。これからは、人の代わりにAIが買い物をする時代が来るでしょう。AIによる購入が増えたとき、ネットで買う割合がどう動くのか。そこは見ものだと思っています。

だからこそ、通販会社はこの変化についていく必要がありますし、まだまだ伸びる余地もあります。AIも使いながら業務を効率よくして、空いた時間を売上を伸ばすことに使う。そうやって伸ばしていけるといいですね。

AIが買い物をする時代の話は、こちらの記事でも書きました。→ AIが買ってきた注文、返品は誰が受ける? Shopifyが商品カタログをAIエージェントに開放

出典

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EC化率市場調査経済産業省食品通販EC運営通販システム
Author
遠藤 友治

フォワード フィールド テクノロジーズ株式会社 代表取締役。 1996年から業務システムの保守・開発に従事。官公庁・保険・製造業を経て、2007年からコンサルティング会社の開発部門を統括。2026年にFFTを創業。一般社団法人日本生成AI推進協会 技術部長。

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